水琴窟とは
昭和50年代に朝日新聞やNHKなどのマスコミによって広く知られるようになった水琴窟。そのルーツを探ると、江戸時代まで遡ることができます。排水を目的として創案された、庭園施設における同じ系統の用語に「洞水門」があります。現在、伝承される「水琴窟」はそれを起源としたものと考えられていますが、起源についての詳細は依然として不明です。「水琴窟」の語の発祥についても同様です。
一般的には蹲踞(つくばい)や縁先手水鉢の鉢前(うみ)の地下に造られたものです。その構造の多くは、底に小さな穴を開けた甕を伏せて埋め、手水の余水が甕の天井から「しずく」となって落ちるように工夫した、一種の発音装置(音具)です。
伏せ甕の底に溜まった水面に落ちる水滴の音が甕の空洞で共鳴し、琴の音に似た妙なる音を響かせることから、いつの頃からか水琴窟と呼ばれるようになりました。
明治から大正、昭和初期を経て、戦後は全く忘れられた存在となってしまいました。
1959(昭和34)年、東京農業大学の平山教授は「庭園の水琴窟について」という論文を造園専門誌に発表されました。当時、日本全国で確認できた水琴窟は二カ所のみ、それも甕は泥に埋もれ、音を聴くことは不可能でした。そのため平山教授は『幻の水琴窟』と呼びました。
また、1981(昭和56)年に、東京農大造園工学研究室が旧吉田記念館の水琴窟調査を品川区から依頼され、そのことが朝日新聞で報じられたり、1983(昭和58)年には朝日新聞「天声人語」に水琴窟のことが二度にわたり取り上げられ話題となりました。
そして1985(昭和60)年に、岐阜県美濃市今井邸水琴窟発見と復元のドキュメンタリー番組がNHKテレビで全国放送されると同時に大きな反響を呼び、以来静かな水琴窟ブームとなりました。
今日では全国に様々な水琴窟風景が誕生していることは周知の通りです。
水琴窟の構造について
水琴窟断面図例1
「幻の音風景 水琴窟」 より |
水琴窟断面図例2
日本の音研究所 提供 |
水琴窟断面図例3
田村 光氏 提供 |
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水琴窟で使用する甕について
水琴窟製作で使用する甕
例その1
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常滑前川製陶所
前川賢吾作 水琴窟専用の甕 |
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