※篠原レポート
ロンドンから列車で西へ250km。エクセター駅で降りて車でさらに南西へ60km。ダートモア国
立指定公園内の小さな村チャグフォードにあるMythic
Gardenという個人宅のお庭に作ってきました。英国では造形作品で飾られた個人宅庭園を一般公開している所が多く、このMythic
gardenは6200坪という広大な庭で毎年夏に英国各地の造形家たちによる展覧会が開かれています。その庭に今回一作品として出展させてもらいました。
何しろ素人による初めての作業ということと材料もすべて現地調達だったので「この土地にあるもので作る」という工夫の連続でした。甕の代わりに素焼きの大きな植木鉢を使い、排水のことを考えて地上型で設置しました。鉢は見せたくなかったので、庭園内に生えている竹を切らせてもらい、囲いと蓋を作り、蓋の中央(甕の穴より少しずれた位置)には花の紐飾りをあしらいました。「Please
give to the flower by scooping water with the bamboo spoon.
(ひしゃくで水をすくってお花にかけてください)」というメッセージを添えて。肝心な音はというと・・・。自分でも驚くくらい結構いい音が鳴りました!
甕選びや細かい作業については水琴窟師の田村さんからアドバイスをいただいていたので水滴音の調整にとても役立ちました。
本当は蹲踞水琴窟を作りたかったのですが、ひとりの作業では無理があること、気候と土地柄の理由で引水や排水に問題があることから今回は伝統的な型で作ることは断念しました。その代わりに竹や棕櫚縄の紐飾りなど日本のテイストを持たせ、英国人の生活や文化に合うセンスのデザインにしました。
「日本の伝統文化を海外で伝える人になりたい」というのが小どもの頃からの夢だったこともあって、以前からご縁のあった英国の知人の造形展に水琴窟を置かせてもらうことができました。日本でたくさん作られている諸先輩方の作品には到底及ばない仕上がりでしたが、夢や希望がいっぱい詰まった初の作品に大満足です。
この庭を訪れる人たちが日本の文化である水琴窟の音と出会って楽しんでもらえることを心から願っています。これからも“見て触って楽しんで”をテーマに、英国の人々に愛される水琴窟をデザインしてゆきたいです。
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